嚥下モデル

投稿者: | 2022年10月18日

嚥下モデルとは

正常の摂食嚥下の生理を述べるとき、主に2つの系統的モデルが用いられます。

4期モデル(Four Stage Model)とは

水、もしくはそれに準じた液体の嚥下動態に対する摂食嚥下モデル。
食物の場所より、口腔準備期から食道期までの4期に分けて説明し、
各期がほぼ重複することなく続いていくモデルです。

 

プロセスモデル(Process Model)とは

食物の咀嚼、嚥下時の動態に対する摂食嚥下モデル。
咀嚼中に食物が口腔と咽頭に存在する事象を説明します。

 

4期モデル(Four Stage Model)

4期モデルは「命令嚥下」の概念を基本としている。
命令嚥下では、対象者が嚥下前に食塊を口腔内でいったん保持した後、合図とともに嚥下を行うものとされていた。
4期モデルをもとにした多くの研究は、液体を命令嚥下したときの運動と食塊の動きを適切に描写しているが、その嚥下運動を、日常の食べる、飲むときの動態へと一般化することは難しい。
バリウムは、はじめ口腔内に保持されている(準備期)。
このとき舌と軟口蓋により口峡部が閉鎖されているので、口腔は咽頭から遮断されている。
そのため、健常者では、嚥下開始前に食塊が咽頭にたれ込むということはない。いったん嚥下が始まるとバリウムは、咽頭を通過し、食道へと運ばれる。

4期モデルのステージは、下記の4つに分類される。

 

口腔準備期

口腔内での食塊形成の時期。舌後方部と軟口蓋による口峡部閉鎖により、口腔は咽頭から遮断されている。
舌が食塊を保持している。

口腔送り込み期

食物を口腔から咽頭へと送り込む時期。
食物が嚥下できる状態になったら、食物を保持していた舌は、前方部から口蓋へと接し始め、舌後方部は下降する。
同時に、軟口蓋が後方へと挙上し、口峡部は開かれ、食塊は舌と口蓋によって絞り込まれるように咽頭へと送り込まれていく。

咽頭期

咽頭の神経、筋の連続した活動により食物が咽頭を通過する時期。
食塊は咽頭から上食道括約筋部を越え、食道へと送られる。

 

食道期

食道に入った食塊は、蠕動運動と重力によって下方へと運ばれ、最終的に下咽頭括約筋部を通り胃へと至る。

咽頭嚥下は、1秒に満たない時間に起こる30以上の神経と筋肉が関わる運動の集合である。

軟口蓋挙上、上咽頭の収縮により鼻咽腔が閉鎖される。

舌根部が後方へ収縮し、中咽頭の収縮とともに食塊を下方へと押す。

舌骨と喉頭が前上方へと挙上する。この喉頭挙上と舌根部の後方への押し込みに伴い、喉頭蓋が後方へと倒れ込む。

喉頭蓋倒れ込みとともに、声門閉鎖と披裂部の内転により、下気道は咽頭腔から完全に遮断される。

喉頭の挙上と輪状咽頭筋の弛緩により、食道入口部が開大する。

 

 

 

 

 

食物を食べるとき、咀嚼された食物は、液体の命令嚥下とは異なる様式で咽頭へと送り込まれる。この食物の流れを5期モデルで表現するには限界がある。そこで、この食物を咀嚼したときの摂食嚥下動態を説明するために、プロセスモデルが提唱された。

プロセスモデル(Process Model)

食物を食べるとき、咀嚼された食べ物は、嚥下の咽頭期が始まる前に、口峡を通って中咽頭、喉頭蓋谷に送りこまれ、集積されていく。

咀嚼された食物の一部が中咽頭へと送られた後も、口腔内に残っている食物は引き続き咀嚼される。

つまり、食物が嚥下前に口腔にもありながら、咽頭にも存在する。

プロセスモデルは、摂食嚥下活動に関連した器官の動きにより、下記の4つのステージに分類される。

第2期輸送は咀嚼中に行われるので、5期モデルと異なり、2つのステージが同じ時間に起こっているというときがある。

第1期輸送(Stage I transport)

捕食された食物を臼歯部へと運ぶ時期。舌が、全体的に後方へと動くことによって、舌の上にのせた食べ物を臼歯部へと運び(舌の「プルバック」運動)、外側へと回転して、食べ物を下顎の咬合面へとのせる。

咀嚼(Processing)

咀嚼により食物を小さく粉砕し、唾液と混ぜ、嚥下しやすい性状へと変化させる時期。
下顎の周期的な咀嚼運動とともに、舌、頬、軟口蓋、舌骨なども周期的に連動しながら動く。

第2期輸送(Stage II transport)

咀嚼した食物を中咽頭へと送る時期。
咀嚼された食物の一部は、嚥下できる性状になると、舌の中央にのせられ、舌の絞り込むような動き(舌の「絞り込み( squeeze back)」運動)により中咽頭へと運ばれる。

咽頭嚥下(Pharyngeal swallow)

食塊を咽頭から上食道括約筋を越え、食道へと送る時期。
固形物を咀嚼し嚥下する時の咽頭と喉頭の動きは、液体嚥下時とほぼ同じである。

口に取り込まれた食物は、舌によりすぐに臼歯部へと運ばれ(第1期輸送, stage I transport)、咀嚼が開始される。咀嚼中に、舌が咀嚼された食片から順々に中咽頭へと運んでゆく(第2期輸送, stage II transport)。喉頭蓋谷に溜まった食塊と口腔から送り込まれた食塊が合わさり、嚥下される。

 

食物の咀嚼中、下顎の周期的な咀嚼運動に連動して、軟口蓋、舌、頬も周期的に動く。
軟口蓋は、開口とともに挙上し、閉口とともに下降する。
舌と頬は、下顎の咀嚼運動にあわせて下顎の咬合面に食物をのせるように動く。
軟口蓋と舌の周期的な運動のため、咀嚼中、口峡部は開いている。
液体嚥下時のような口腔内に食物を保持するような口峡部の閉鎖は見られない。

咀嚼された食物の一部は、嚥下できる性状になると、舌の中央に集められた後、口峡を越えて中咽頭へと送り込まれる。
この送り込みを第2期輸送(Stage II transport)と呼ぶ。
第2期輸送は、閉口中に起こる。舌の前方部が最初に上顎前歯の裏側の硬口蓋に接触する。
咀嚼された食塊を中咽頭へと絞り込むように、舌-口蓋の接触領域は徐々に後方へと拡大していく(舌の「絞り込み( squeeze back)」運動)。
第2期輸送は、主に舌の絞り込み運動によるため、重力は必要としない。
第2期輸送は咀嚼中に間歇的に起こり、送り込まれた食塊は、その後の咀嚼中、中咽頭の舌背部と喉頭蓋谷部に集積される。
口腔に残っている食物は、引き続き咀嚼され、さらなる第2期輸送により、中咽頭に集積される。

 

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