虚血性心疾患とは?
虚血性心疾患とは,心臓を取り巻く冠動脈がスパスム(攣縮)やアテローム(粥腫)や動脈硬化により狭 窄しておこる疾患で,狭心症と心筋梗塞に大別され主症状に胸痛,
随伴症状に冷や汗,吐き気,呼吸苦がある.
狭心症とは冠動脈の狭窄により血流が低下して起こる心筋虚血(酸素欠乏)の状態で, 心筋梗塞とは血栓などが原因で冠状動脈の閉塞または高度な狭窄により,心筋の壊死が生じている状態である.
狭心症は可逆性であるが心筋梗塞は非可逆性であ るところに相違点がある.
歯科治療における注意点とその対処法
(1)十分な医療面接を行う
虚血性心疾患の種類や症状,内服薬などの情報を得る.必要な場合にはかかりつけ医に心機能状態や合併疾患など診療情報の提供を依頼する.
(2)凝固薬や抗血小板薬を内服している場合の観血的処置に注意する
観血的処置の必要な患者で,抗凝固薬や抗血小板薬の内服がある場合は,原則的には服薬の継続下で観血的処置を行うことが推奨されている.
血液の固まりに くさの指標には,PT-INRが使用されることが多く, 術前に患者のPT-INR値を把握しておくことが重要となる.
(3)処置中はモニタリングをする 虚血性心疾患患者では血圧,脈拍数,心電図のモニタリングを行いながら, RPRが12.000以下であ ること,心電図上のST部分の変化がないことを確認しながら治療を行う.
(4)狭心症発作の疑われる場合の対処法
治療を中断し,安静に保ち酸素を投与する.ニトログリセリン製剤,硝酸イソソルビド製剤の舌下投与や スプレー投与を行う.
ただし,収縮期血圧が GOmmHgの時や,過度な徐脈や頻脈の場合は投与しない.
(5)心筋梗塞患者では梗塞発症後Sか月までは 原則として歯科治療は行わず,対症的処置にとどめ対応可能な医療機関へ紹介する.
PT-INR(prothrombin time-international normalized ratio):プロトロンビン時間 国際標準比
PT-INRは世界で標準化された血液凝固能検査 で,ワルファリンカリウムによる抗血栓療法患者
へのコントロールの指標に用いられる.1.0が標準で,数値が大きいほど血液が固まりにくい状態を表す.
PT-INR 3.0までは局所的な止血対応で普通抜歯が可能とされている.
関連マーカー
1) APTT:内因系凝固活性化機序を反映する検査.
2) 凝固VII、X、V、II因子:PTが延長しているというのは、これらの4つの凝固因子のどれか(複数のこともあり)の活性が低下していることになる。
3) PIVKA-II:ビタミンK欠乏症になるとPTが延長する。PTが延長していてビタミンK欠乏症を疑った場合には、PIVKA-IIが陽性であることを確認してビタミンK欠乏症の確定診断を行う。
APTTよりもPTの方が延長しやすい病態
多くの場合、凝固第VII因子の半減期が短いことが理由.
1) ビタミンK欠乏症
2) ワーファリン内服
3) 肝不全、肝硬変、慢性肝炎
4) 蛋白合成能低下(低栄養状態)
5) 先天性第VII因子欠損症
RPP
心筋酸素受容の指標として。収縮期血圧×心拍
数で計算されるrate pressure productの略語で ある. RPPは心臓の仕事量を表し心筋酸素消費量
と相関が高い
抗凝固薬
ワルファリンカリウム (ワーファリン)
ダビガトラン(プラザキサ)
リバーロキサバン (イグザレルト)
アピキサバン (工リキュース)
抗血小板薬
アスピリン (パイアスピリン)
チクロピジン塩酸塩 (パナルジン)
クロピドグレル硫酸塩 (プラビックス)
シロスタゾール (プレタール)