糖尿病とは
自己免疫疾 患などで騨臓のβ細胞が破壊される1型糖尿病と, インスリン抵抗性とインスリン分泌不足が原因の2 型糖尿病に分類される.
診断には血糖値とグリコヘモグロビン(HbAlc) のデータが用いられる. HbAlcは赤血球中のヘモグ ロビンにブドウ糖が結合したもので,赤血球の寿命(約 120日)から考えて過去1~2ヶ月の血糖値を反映している.
HbAlc値7.0%以上はコントロール不 良を示し,正常値は4.0~6.0%である.日本糖尿 病学会(JDS)の基準値による血糖コントロールの指標を示す(表1). 糖尿病には合併症も多く,糖尿病の状態だけでなく合併症の有無についても十分な対応が必要となる.
治療における注意点とその対処法
(1)十分な医療面接を行う
糖尿病の状態,治療内容,関連疾患を確認し,必要であれば,かかりつけ医に合併症の有無も含め診療情 報の提供を依頼する.
(2)投薬状況を確認する
不適切な食事管理やインスリン・経口糖尿病薬の管理が原因で,治療中に低血糖性昏睡を生じることもあ るので注意する.
(3)歯科治療の時間帯
午前中の早い時間,あるいは食後 に行う治療中に最も注意しなければいけない合併症は低血 83 糖で,食事前の血糖が低下している可能性が高い時間 帯の治療は避ける.ただし,患者にとって歯科治療はストレスであり,ストレスは血糖値を上げることも考 虐しておく必要がある.
(4)治療中はモニタリングする
治療中は血圧の確認を行う.糖尿病患者の40-60%が高血圧,動脈硬化を合併しており,冠動脈の狭 窄に伴う狭心症や心筋梗塞を引き起こす可能性がある.
(5)血糖値を測定する
簡易血糖測定器で,治療前の血糖値を確認し血糖管 理状況を確認する.
(6)易出血性と易感染性への対処
コントロール不良の患者では易感染性のため創傷治癒遅延や,術後感染を生じやすいので抗菌薬を術前投 与するのが有効である.また,血管壁の脆弱化によ り易出血性であることが多いため,緊密な縫合や止血 用シーネなどを作製し圧迫止血を確実に行う必要がある.
インスリン抵抗性とは?
インスリンに対する肝臓細胞,筋肉細胞,脂肪 細胞の反応が鈍くなり,インスリンの量は確保さ れているものの,インスリンが十分に働けない器態をいう.